磁鉄鉱 magnetite Fe2+Fe23+O4 等軸晶系  [戻る

透過では光を透さず,反射光で観察する必要がある。スピネル(逆スピネル)構造。

反射偏光顕微鏡での性質)

形態/粒状のことが多い。自形は8面体や12面体で,その断面は4角や6角などの多角形で丸みを帯びることが多い。他にスピネル式双晶による板状結晶の断面(短冊状)をなすこともある。その他,モザイク状集合体のことも多い。

反射色/褐灰色

反射多色性/なし

異方性/なし

反射率(λ=590nm)/約20%

ビッカース硬度(kgf/mm2)/約440〜1000以上(Mg,Alの多いものは硬い)。硬度が高く,平滑な研磨面を得るには時間がかかる。

内部反射/なし

産状

火成岩や変成岩中に副成分鉱物として広く見られ,この場合,珪酸塩の造岩鉱物中などに,不定形粒状のほか,丸みを帯びた多角形の自形や半自形をなして散在する。また,蛇紋岩中に,元のかんらん岩中のかんらん石や輝石類のFe2+が遊離して酸化することで生成し,この場合,微粒子の塵状不定形集合体をなす。時にその微粒子が,元のかんらん岩の造岩鉱物の粒界に沿って配列したり,クロムスピネルの結晶周辺部に平行連晶をなすこともある。
磁鉄鉱を多く含む岩石は紐につるした磁石が吸い付く。

Fe2+⇔Mg,Fe3+⇔Ti,Fe3+⇔ Fe2+などの置換が部分的にあるが,少しの組成変化は光学的変化にあまり現れない。MgFe2O4組成のものは苦土磁鉄鉱 magnesioferrite,Fe2TiO4組成のものはウルボスピネル ulvospinelという。チタン磁鉄鉱と呼ばれているものはウルボスピネルと磁鉄鉱の中間体((Fe2+,Fe3+)(Fe2+,Fe3+,Ti)2O4)で,特にアルカリ玄武岩などによく含まれている(光学的には磁鉄鉱と同じ)。






玄武岩中の磁鉄鉱(Mt) 岡山県荒戸山/平行ニコル
かなりTiを含み,ウルボスピネルに近いもので,玄武岩の石基に副成分鉱物として含まれるもの。玄武岩にはこのような磁鉄鉱の微粒子を顕著に含み,ひもに吊した磁石が吸い付くものが少なくない。
Mt:磁鉄鉱,Cpx:普通輝石





ケイ質片岩中の磁鉄鉱(Mt)愛媛県新居浜市/平行ニコル
磁鉄鉱は結晶片岩にもしばしば粒状で含まれ,写真のようなケイ質片岩のほか,特に苦鉄質岩を源岩とする緑色片岩・青色片岩・角閃石片岩によく含まれる。赤鉄鉱は板状の自形で片理に沿って配列している。
Mt:磁鉄鉱,Hm:赤鉄鉱,Ms+Chl:白雲母+緑泥石,Sps:ざくろ石(スペサルティン),Qz:石英




蛇紋岩中の磁鉄鉱(Mt) 岡山県大佐/平行ニコル
かんらん岩の蛇紋岩化の際にかんらん石や輝石類などから遊離した鉄が磁鉄鉱になったもの。蛇紋岩にはこのように著量の磁鉄鉱を含み,ひもに吊した磁石が吸い付く場合がある。
画像のものは蛇紋石の結晶成長で掃き寄せられたような塵状集合体になった磁鉄鉱。なお,この磁鉄鉱の微粒子は,もとのかんらん岩の造岩鉱物(かんらん石や輝石類)の粒界に並んでいることもある。蛇紋岩中では時々,自然銅や,このようにアワルワ鉱(Ni2〜3Fe)などの還元環境でできる鉱物を伴うことも多い。
Mt:磁鉄鉱,Aw:アワルワ鉱,Ser:蛇紋石




蛇紋岩中の磁鉄鉱(Mt) 山口県  反射:平行ニコル

かんらん岩の蛇紋岩化の際に輝石類やかんらん石などから遊離したFeがクロムスピネルの周りに磁鉄鉱微粒子(Mt)として沈着したもの(クロムスピネルと磁鉄鉱は基本的に同じスピネル構造の原子配列なので平行連晶をなす)。磁鉄鉱はクロムスピネルはよりも褐味がありやや明るい。
Mt:磁鉄鉱,Cr:クロムスピネル,Ser:蛇紋石 写真左右,各 約1mm。